離婚(取扱業務)

離婚事件について(新井弁護士)

離婚事件  まず,離婚について,これから詳しく説明します。
 次に,あなたが弁護士に対して相談したい・依頼したいと思ったときの「相談の流れ」を説明します。

「相談の流れ」を先に知りたいときは,「相談の流れ」のページをクリックしてください。

離婚とは?

 離婚の種類には,おおまかに言って,協議離婚,調停離婚,裁判離婚の3つがあります。裁判離婚はさらに4つに分けられます。

 協議離婚とは,夫と妻が,離婚することに同意して役所に届け出ることにより,できます。
 調停離婚は,裁判所に調停を申し立て,調停で,夫と妻が話し合いによって合意することにより,できます。
 裁判離婚は,調停がまとまらずに,裁判になったときに,和解,判決などにより,できます(審判,請求の認諾といったケースもありますが,ほとんどありません。)。 調停をしないで,いきなり裁判にすることは,法律的に,できません。

離婚の手続
協議離婚 夫と妻が,私的に離婚することに合意した場合です。
役所に届け出ることにより,できます。
調停離婚 裁判所に調停を申し立てます。
調停で,夫と妻が話し合いによって合意することにより,できます。
裁判離婚 調停がまとまらない場合,和解,判決などにより,できます。
調停をしないで,いきなり裁判にすることはできません。

 それぞれの手続の詳しい説明は,それぞれの項目を見て下さい。

離婚で問題となること

離婚で問題となるのは,主として,次のことです。
 ① そもそも相手が離婚を拒否しているのに,離婚できる場合とはどんな場合か?
 ② 親権をどちらの親がとるのか?
 ③ 財産分与とは?
 ④ 解決金とは?
 ⑤ 慰謝料とは?
 ⑥ 婚姻費用とは?
 ⑦ 養育費とは?
 ⑧ 年金分割とは?
それぞれについて,以下で説明します。
離婚手続のそれぞれについては,その後に,説明します。

 典型的なもので,「どのような問題であるか」を中心に記載します。

そもそも相手が離婚を拒否しているのに,離婚できる場合とはどんな場合か?

 相手が拒否している場合,調停を申し立て,調停が成立しないことを受けて,裁判(訴訟)を提起して,勝訴する必要があります。
勝訴するためには,次の5つの離婚事由のどれかに,あてはまることが必要です。
 ① 不貞(不倫)
 ② 悪意で遺棄されたとき
 ③ 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
 ④ 相手方が回復の見込みのない強度の精神病にかかったとき
 ⑤ 結婚を継続し難い重大な事由
 ただし,このうち,②,③,④が離婚事由として認められて離婚に至ることは,稀です。
 また,①(不倫)も,単独で離婚事由となるというより,結婚が破綻してしまっていると認められてはじめて,離婚事由となります。

 法律的に言うと,①から④までの離婚事由は,たとえ,そうした離婚事由があっても,裁判所が,「結婚はまだ破綻しておらず,やり直す方がよい。」と判断すれば,離婚させないことが出来るものなのです。

 これに対して,⑤(結婚を継続し難い重大な事由)があるとき,言い換えると,結婚が破綻してしまって,やり直せないときは,裁判所は,離婚させなければならないのです。
 ですから,離婚事由は5つあると言いましたが,結局は,おおまかに言って,結婚が破綻してしまってやり直せないとき,離婚裁判で勝訴できる,と考えればよいことになります。
 そこで,結婚が破綻していることを証拠付きで示して行くことが,第1のステップです。
 現在の裁判では,多くの場合,別居(単身赴任などの,夫婦の合意の上での別居を含みません。どちらかが,「もう夫婦としてやって行けない。」として,別居に踏み切った場合の別居です。)から5年間経てば,おおむね,結婚が破綻してしまっていると認められることとなります。
 ですから,離婚したければ,まず,別居に踏み切ることです。別居していなかったり,別居後5年経っていなかったりするときは,相手側の継続的な凄まじい暴力や相手方が特定の相手と長年不貞を続けているなどのような特別な事情がないと,なかなか離婚裁判に勝訴することは難しいです。
 ただし,離婚事由がなくても,話し合いにより離婚に至るケースは多いので,諦める必要はありません。

親権

 離婚する場合,20歳未満のお子さんについては,どちらかの親が親権をもつことが必要です。
 1人のお子さんについて夫も妻も2人とも親権をもつことは,現在の日本の法律では,認められておりません(ただし,2人のお子さんがいる場合,1人のお子さんは妻が,1人のお子さんは夫が,もつことは可能です。これを共同親権と言います。)。
 離婚の場合,夫と妻とが親権を争い合うことが珍しくありません。
 もっとも,親権を争い合った場合,妻が親権をとるケースが8割程度です。
 夫が親権をとるケースは,1割,共同親権のケースが1割です。
 親権をどちらの親がとるかについては,夫婦の話し合いによりますが,話し合いがつかない場合,お子さんの幸福のために,どちらがとるのが望ましいかという観点から,裁判所が決めます。現在の裁判所は,お子さんのためには,原則として,母親が親権をもつことが望ましいと考えています。
 夫が親権をとることができるためには,妻が夫と子供を捨てて勝手に家出してしまい,1年も2年も経過し,お子さんが母親を忘れてしまったなどのような特別な事情が必要です。
 お子さんを現実に養育した期間が長いことは,親権をとるために,重要な要素です。
 その他,親の経済的事情や健康状態も,重要です。
 ただし,お子さんを力ずくで連れ去るなどをすると,犯罪となることもある外,いくら長期間お子さんを育てていても,親権をとるための有利な事情として考慮され難くなりますので,ご注意下さい。

財産分与とは?

 夫婦が結婚期間中(ただし,離婚前に別居した場合,原則として,別居時まで)に築いた財産を,離婚に際して,分割し,妻と夫が各々取得することを財産分与と言います。
 結婚期間中に取得された夫婦名義の財産は,原則として,財産分与の対象となります。
 財産分与の割合は,原則として,2分の1ずつです。

 ただし,夫か妻かが,自分の肉親から受けた贈与・相続などは,財産分与の対象となりません。
 また,妻か夫が,結婚前からもっていた財産も,財産分与の対象となりません。
 さらに,夫か妻かが,特殊な技能により取得した財産も,財産分与の対象となりません(問題になる場合は,あまりありません。)。
 財産分与の割合は,財産取得に対する夫と妻のそれぞれの貢献度により,かならずしも2分の1ずつにはなりませんが,最近では,「2分の1ルール」が原則として適用されています。

 財産分与の対象となる財産の範囲の中には,次のようなものが含まれます。
 借金も,財産分与の対象となることにご注意下さい。
   ■不動産(土地・建物)
   ■預貯金
   ■株式等の有価証券
   ■保険(解約返戻金見込額)
   ■車
   ■退職金見込額
   ■その他の一切の財産
   ■借金

解決金とは?

 妻が夫から受け取ることができるお金などの財産としては,財産分与の他,慰謝料や未払の婚姻費用分担金などがあります。
 けれども,こうした区分をしないで,全部まとめて,「解決金」とすることがあります。たとえば,区分ごとにキッチリ分けて計算するよりも,妻にすこし余計にお金を渡す場合,調停や,和解離婚で,「解決金」という言葉を使うことがあります。

慰謝料とは?

 離婚することについて落ち度のある側が,相手側に支払うものです。
 ただし,慰謝料は,離婚しないでも,とれることがあります。たとえば,夫の不貞があったとき,妻は夫と不貞相手に対して,慰謝料を請求できます。
 100万円から300万円程度が,大体の相場です。
 もちろん,場合によっては,それより少なかったり,高かったりします。
 不貞相手に対しては,消滅時効に特に注意する必要があります(不貞が行われたことと不貞相手とを知った時点から3年間で時効となります。)。
 夫・妻に対しては,離婚してから6か月間経つまでは時効とならないので,あまり心配する必要はありません。

婚姻費用とは?

 夫,妻,子供は,結婚期間中は,たとえ別居していても,同じレベルの生活をすべきであるとの基本的考え方に立つものです。
 つまり,別居して暮らしている場合,収入の多い側は,収入の少ない側に,高い所の水が低い所へ流れて行くように,一定のお金を渡し,生活レベルを同じにしなければなりません。
 この一定のお金を,婚姻費用分担金(婚姻費用とか,婚費とかと省略して言うこともあります。)と言います。
 通常,1か月に1度ずつ,支払われます。
 具体的な算定方法は,判例タイムズ1111号に載っているグラフにより,夫の収入額と妻の収入額などが分かれば,大体の相場が算出されるようになっています。
 婚姻費用の額だけで合意できないときは,弁護士を含む法律の専門家に依頼する必要は,さほどないと思います。

養育費とは?

 親権をもたない親が,親権をもって子供を養育している親に対して支払うお金です。
 これも,婚姻費用と同じように,判例タイムズ1111号に載っているグラフにより,夫の収入額と妻の収入額などが分かれば,大体の相場が算出されるようになっています。
 養育費は,子供が20歳になるまでもらえるものですが,両親が大学卒などで子供が当然大学に行けると見込まれる場合,22歳(現役で大学に入って4年で卒業する齢)までもらえます。一浪か一留を見込んで,「23歳まで」とすることもあります。
 養育費の額だけで合意できないときは,弁護士を含む法律の専門家に依頼する必要は,さほどないと思います。

年金分割とは?

 結婚期間中の厚生年金などについて,分割するものです。
 国民年金は,分割の対象となりません。
 原則として,2分の1ずつに分割されます。

離婚の手続

協議離婚をするには?

 夫と妻が離婚することに合意すれば,できます。区役所・市役所などに,所定の「離婚届」の用紙があります。この用紙に,夫と妻がそれぞれ,署名捺印をし,証人2人の署名捺印をして,役所に届け出るものです。郵送でも持参でもできます。
 本籍地の役所に届け出るときは,戸籍謄本は必要ありません。

 離婚に際しては,どちらが親権をとるのかを決めなければなりません。
 また,旧姓に戻らずに,結婚時の姓のままでいたいときは,別の届出(離婚の際に称していた氏を称する届。届出用紙が役所にあります。)を併せて行う必要があります。これを忘れると,自動的に旧姓に戻ってしまい,離婚の日から3か月経つと,結婚時の姓を名乗ることができなくなりますから,注意が必要です。

 なお,協議離婚は,お金の問題(養育費,婚姻費用,慰謝料,財産分与,年金分割,解決金など。詳しくは,それぞれの項を見てください。)についてとくに事前の話し合いがなくても,できますが,離婚する前に,きちんと話し合い,夫と妻の署名捺印の入った書面を作成して置くことをお勧めします。捺印は,実印とし,発行後すくなくとも3か月未満の印鑑登録証明書をもらっておくと,一層安心です。できれば,公証役場で公正証書を作成して置くことが,後々のトラブルを防ぎやすく,さらに望ましいと思います。
 公証役場で強制執行受諾文言入りの公正証書を作成して置くと,約束したお金の支払がないとき,相手の財産がどこにあるか分かっていれば(給料などを含む。),すぐに強制的に取り立てることができます。

 当事務所では,相手方との交渉,書面作成(公正証書を含む。)のお手伝いもしています。

 ただし,夫と妻との話し合いでスムーズに解決できそうなときに,弁護士をつけると,かえって相手方が意固地になって,解決までに長引くケースもありますので,あなた自身の場合をよく振り返って,弁護士に頼むか頼まないかを決めることがよいと思います。
 一般的には,お金の点で折り合いがつかず,お互いの主張する額の差が大きいとき,弁護士を頼むとよいと考えます。

 協議離婚によることができれば,手続としては,一番早くて,簡便です。

調停離婚をするには?

 ところが,夫と妻のどちらかが離婚したいのに相手が応じないとき,または,離婚自体には同意しているけれど親権や財産分与などで折り合いがつかないとき,相手の住所地などにある家庭裁判所に,離婚調停を申し立てる必要があります(合意すれば,その合意した裁判所でできます。その他,例外があります。)。
 調停は,家庭裁判所で行います。通常,調停官(裁判官など)の監督の下,男性の調停委員と女性の調停委員が2人組んで,それぞれの当事者の話を個別に聴き(相手は,通常,同席しません。),相手方に伝え,折り合える所を探して行くものです。普通,1年程度で,まとまるか,まとまらないかが決まることが多いです。裁判所に行く回数は,7回~9回程度,1回あたりの時間は,2時間程度,1か月強に1度程度の頻度です(ただし,春,夏,暮れ・正月などがあったり,書類の入手に時間を要したりすると,2か月程度の間が開くこともあります。)。
 調停がまとまった場合,その時点ですぐに離婚ができ,また,約束したお金の支払がないとき,相手の財産がどこにあるか分かっていれば(給料などを含む。),すぐに強制的に取り立てることができます。
 もっとも,調停は,あくまでも話し合いなので,合意に至らなければ,まとまりません。

 まとまらない場合は,次のような場合です。
 そのような場合,次にどうすればよいかも,あわせて書いておきます。

① どちらかが絶対に離婚に応じないとき
 客観的に結婚が破綻してしまってやり直せないときは,離婚訴訟を提起して,離婚判決を得れば,離婚できます。「別居後5年間」経つと,結婚の破綻が認められやすくなります。

② 親権をどちらがとるかで折り合いがつかないとき
  8割は女性が親権をとります。1割が男性。1割が共同親権(子供が2人以上いるとき,1人の子供の親権を一方の親が,1人の子供の親権を他方の親がとるもの。1人の子供の親権を双方の親がとることはできない。)です。
 男性が親権をとれるのは,妻が家出し,男性が子供をずっと手元で養育していた場合などに限ります。男性の事件をお引き受けして,親権をとれたケースはありますが,非常に狭き門です。
 親権を決定するときは,子供の幸福の観点から,決めますが,子供の幸福のためには,原則として母親の方がよいというのが,今の日本の裁判所の考え方です。

③ お金の問題(財産分与,解決金,慰謝料,婚姻費用,養育費,年金分割など)で折り合いがつかないとき
 離婚裁判を提起して離婚判決を得れば,決着をつけることができます。
 なお,婚姻費用は,離婚前にとることができるものです。
 慰謝料は,離婚裁判の中で求めることが多いですが,不貞などがあるとき,離婚裁判とは別の手続で,結婚したまま,とることもできます。

 調停は,とくに弁護士がつかないでも出来ますが,弁護士をつけた方が,有利になることが多いです。離婚を専門とする弁護士は,法律的な知識があるほか,たくさんの離婚事件を扱っていて経験が豊富なので,調停をどう進めて行けば有利になるかをよく知っているからです。(ただし,離婚をあまり手がけたことのない弁護士は,かならずしも,そうではないことも,あります。)。
 調停であなたと同席して調停委員と話したり,弁護士1人が調停に行って調停委員と話したりできるのは,弁護士だけです(あなたの肉親や,行政書士などは,これができません。)。

 相手方が弁護士をつけた場合は,あなたも弁護士をつけた方がよいでしょう。その弁護士は,法律的に許される手段を全部尽くして来るからです(たとえば,相場よりもかなり高い慰謝料の請求など。)。
 あなたが,自分1人では,処理が困難であると判断したときも,同様です。

 調停委員は,あなたの敵ではありませんが,味方でもなく,時には,誤解の余地のあることを言うこともあります(たとえば,訴訟になっても離婚判決がまず出ない案件で,「離婚しないと,訴訟になって負ける可能性がある。」と言うなど。この言葉は,ウソではありませんが,その可能性がほとんどないときでも,調停委員の中には,そんな言葉を述べて,離婚するように説得する人もいないわけではありません。これは,脅しのように響きかねない誤解の余地のある言葉です。)。
 それでは,どうすれば有利に出来るかですが,ポイントは,調停委員をあなたの味方につけることに尽きます。
 味方につけるためには,調停委員に媚びる必要はないのです。大声で喋る必要も,たくさん喋る必要もありません。
 調停委員があなたに何を望んでいるかを聴き取り,誠実にきちんと応えて行けばよいのです。
 たとえば,調停委員があなたを疑っていたり,非難したりしていることがあります。 そうしたときは,調停委員が何を疑い,非難しているかを聞き出し,次の調停の時までに,疑いを解いたり,非難が的外れであることを,出来るだけ客観的な裏打ちある証拠とともに,示せばよいのです。次に,できれば,相手の方こそ非難されるべきであることを,証拠付きで示せれば,ベターです。(自分を棚上げして,相手ばかり非難するのは,逆効果です,念のため。)

 もちろん,インターネットや本や離婚経験者の話を聴くことなどで知識をたくさん手に入れれば,弁護士が知っている知識や経験をかなりの程度カバーすることができます。
 このサイトでは,出来るだけ多くの知識をあなたに提供します。
 しかし,あなたの離婚事件であなたに必要な知識を全部書き尽くすことはできません。そうするためには,無限に近い場合分けをして書かなければならず,中には,今この時点では正しくても,来年は違っているということもあるからです。
 今のあなたに必要な知識・経験を隅々まで手に入れることは,とても大変で,全部調べたつもりでも,思いがけない所で穴があって不利になってしまうことがあります。 たとえば,夫の退職金が財産分与の対象となることを忘れてしまって,大損した人がいます(弁護士の中にも忘れた人がいるそうですが…。)。
 また,情報をきめこまかく手に入れる時間もずいぶん必要で,弁護士にお金を払っても,自分で調べる時間を仕事に費やした方がかえって得になる場合もすくなくありません。

裁判離婚をするには?

 調停がまとまらない場合,どうしても離婚したければ,裁判離婚を提起するしかありません。

 裁判離婚は,家庭裁判所に離婚裁判を提起することから始めます。
 調停と違って,合意で裁判所を決めることができませんが,原則として,あなたの居住地の裁判所で裁判をすることができます(相手方の居住地の裁判所でも,できます。)。
 離婚したい側が,裁判を提起し,後でご説明する離婚事由の有無をめぐって,厳しい主張・立証(証明)を繰り広げるものです。

 裁判離婚になっても,弁護士をつけることは法律的には必要ありませんが,実際には,弁護士をつけないと,かなり困難となります。
 調停と違って,提出する書類の出し方1つとっても,厳格なルールがあって,裁判所の書記官に聞けば教えてくれますが,慣れるだけでも大変です。
 どんなタイミングでどんな主張をし,どんな証拠を出せば有利になるのかについては,弁護士がそれぞれ毎日しのぎを削って競争している所で,法律のアマチュアには,よほどの人でないと,太刀打ちできない所です。  裁判の怖い所は,①自分のためによかれと思って提出した証拠が,逆手をとられて,不利になってしまうことがすくなくなく,②事実であっても,証明できないと,存在しないものとして扱われる場合があることです。
 弁護士は,証拠を提出する際,その証拠がどんなふうに逆手にとられる可能性があるかをよく吟味した上で,提出します。メリットとデメリットを慎重に天秤にかけるということです。また,証明するために,どんな証拠をどんな順番で出すかについても,戦略を練っています。

 裁判離婚の出口は,主として,和解離婚と判決離婚があります。
 和解離婚は,夫と妻との話し合いがまとまれば出来るもので,その点は,調停離婚と同じです。違うのは,あくまでも離婚判決を目指す途中で,話し合いがまとまれば,和解離婚となるということで,それまで裁判で有利に進めて来た側(判決になれば,有利な判決を得ることを期待できる側)が,有利な和解をできるのです。相手を土俵際まで追い込んだ上で,和解すれば,ほとんど判決と同じぐらい有利な和解ができることになります。
 そこで,判決離婚を説明した方が,分かりやすいと思います。

 法律的な離婚事由があれば,離婚判決を得ることができます。法律的な離婚事由とは,次の5つです。
 ① 不貞(不倫)
 ② 悪意で遺棄されたとき
 ③ 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
 ④ 相手方が回復の見込みのない強度の精神病にかかったとき
 ⑤ 結婚を継続し難い重大な事由
 このうち,②,③,④が離婚事由として認められて離婚に至ることは,稀です。
 また,①(不倫)も,単独で離婚事由となることはあまりなく,結婚が破綻してしまっていると認められてはじめて,離婚事由となります。
 法律的に言うと,①から④までの離婚事由は,たとえ,そうした離婚事由があっても,裁判所が,「結婚はまだ破綻しておらず,やり直す方がよい。」と判断すれば,離婚させないことが出来るものなのです。

 これに対して,⑤(結婚を継続し難い重大な事由)があるとき,言い換えると,結婚が破綻してしまって,やり直せないときは,裁判所は,離婚させなければならないのです。
 ですから,離婚事由は5つあると言いましたが,結局は,おおまかに言って,結婚が破綻してしまってやり直せないとき,離婚判決を得ることができる,と考えればよいことになります。
 そこで,結婚が破綻していることを証拠付きで示して行くことが,第1のステップです。
 現在では,多くの場合,別居(単身赴任などの,夫婦の合意の上での別居を含みません。どちらかが,「もう夫婦としてやって行けない。」として,別居に踏み切った場合の別居です。)から5年間経てば,おおむね,結婚が破綻してしまっていると認められることとなります。
 ですから,離婚したければ,まず,別居に踏み切ることです。別居していなかったり,別居後5年経っていないときは,相手側の継続的な凄まじい暴力などのような特別な事実がないと,なかなか判決離婚は難しいです。

戸籍手続

 旧姓に戻らずに,結婚時の姓のままでいたいときは,別の届出(離婚の際に称していた氏を称する届。届出用紙が役所にあります。)を併せて行う必要があります。これを忘れると,自動的に旧姓に戻ってしまい,離婚の日から3か月経つと,結婚時の姓を名乗ることができなくなりますから,注意が必要です。
 あなたが旧姓に戻った場合,お子さんと姓が違ってしまうことが普通です。この場合,裁判所に申し立てることにより,簡便な手続で,お子さんの姓をあなたと同じ姓にすることができます(東京家裁では,原則として,申立日,即日に,認めます。)。

どんな場合に弁護士に依頼するのがよいか

依頼するのがよいケース

  • ■ 相手とまったく話し合いにならない場合
  • ■ 相手と話し合いたくない場合
  • ■ 浮気相手に慰謝料を請求したい場合
  • ■ 当方の離婚の意思は決まっているのに,相手が離婚に応じてくれない場合
  • ■ 自分で収集した浮気の証拠が裁判でも有効なのか心配な場合
  • ■ 浮気がばれてしまい裁判を起こされてしまった場合
  • ■ 離婚協議や調停で折り合いがつかない場合
  • ■ 信頼できる弁護士に全てお任せしたい場合

弁護士に依頼するメリット

  • ■ 相手との交渉を全て代行できる。
  • ■ 調停や裁判になってもそのまま対応できる。
  • ■ 裁判になった場合の見通しをご教示することができる。
  • ■ 手続の細かな流れに精通しているので,不慣れゆえの滞りがなくなる。
  • ■ どんな資料を収集し,どのようなタイミングで提出したら良いか,専門的な知識・技術があるので,最大限有利な解決を図れる。

後日追補予定

 ■ 相談事例
 ■ 判例
 ■ 男性のための離婚
 ■ 女性のための離婚